不器用くんとガシガシくんの話
本来は小説を書くところなのですけれど、今日はエッセイのような形で少し書かせてくださいね。テーマはタイトルの通りです。また、当ブログは完全18禁となっておりますので、18歳以下の方やエッチな描写がお好きでない方は読むのをお控えくださいませ。
今日は性欲ライフハックを書きます。現在セックス相手を募集している、または婚活しているなど、セックスのうまい男性を探している方の参考になればと思います。
実は「セックスのうまい男性」という概念には落とし穴があります。
一般的に言うセックスのうまい男性の見分け方
デートが楽しい≠セックスがうまい
これは頭の片隅に入れておいた方が良いと思います。(ここで大事なのは、どんなときも相手に期待しすぎるな、ということです)
デートの内容とセックスは、若干の比例こそしますが、能ある鷹は爪を短く…じゃなくて爪を隠すのです。デートで全然「理想の男性」っぽくなくても、感動するほど素敵なセックスをする男性はいます。そしてその逆で、デートはとっても楽しかったのに、セックスは「普通」な男性も。
恋愛工学では「女性とベッドインするところ」までを語っていることがほとんどです。実際ベッドの中でのテクニックというか、相手との心の通わせ方についてはもう、考えるより感じなければたどりつけない場所があると思います。「ここまで来たら本能に身を任せよ」みたいなことが書いてあると、うなずきます。もう、セックスは本能なのだと思うからです。
わたし自身は性に関して非常に積極的です。そして、それをしている時間はすべてを忘れて没頭します。そこで相手が「計算して」行動していると冷めてしまうのです。いかにもな長いキスをされると冷めてしまったり。
楽しいセックス
そもそも、相手がうまいかどうかより、お互いが楽しめたかどうかがセックスにおける唯一の判断基準ではないかと思います。
……少し昔の体験になってしまいますが、ちょっと変わった男性とお付き合いしていました。彼は女慣れどころか人慣れしておらず、デートの段取りはすべてわたし任せ。職人タイプの人で、基本無口。とても穏やかだけれど、何を考えているのかもほとんどわからない人でした。
「仕事一辺倒だったから、いろんな経験が人より少ない」
その人はこんなことを言っていました。
会っていても、まあ楽しんでくれているのだろうけど、とにかく自分からは手ひとつ繋いでこない人でした。わたしは、どうしてもその人と分かり合いたくて、2回目のデートの待ち合わせ場所を決めるメールで「次のデートでホテルに行きたいです」とあらかじめ伝えておきました。その人からは「ちょっと早すぎる気もするけど、夜になっても君の気持ちが変わらなかったら、行こう。昼間デートしてそのまま帰るのでも構わないからね」みたいな返事が来ました。
その日のデートは、何一つ段取り良くも無かったけれど、すごく楽しかった。日が落ちて、ふと目が合った瞬間、行こうか、ってなりました。
その人のセックスは、うまく言葉にできない思いがすべて詰まったような濃厚なものでした。キスをしている時の彼の手の置き場さえ濃厚で、腰からお尻にかけて包むようにもみほぐしながらのキスでした。やっと胸に手が伸びてきたのは、もう20分はキスをした後のことでした。
胸の愛撫も「胸だけで絶頂」を何度も繰り返すくらいに丁寧でやさしいものでした。そして、あそこをたっぷり舐めてくれました。愛を感じるなんてものじゃない。普段大人しい彼のすべてがギュッと詰まった体と体の会話がはじまりました。
わたしは、優しくされるとぜんぶ相手に返したくなります。だから、わたしもおなじくらい時間をかけて彼を愛しました。彼は変に恰好つけたりせず、官能のおもむくままに声を出したり表情に出す人でした。彼の反応や声に導かれて彼を刺激していると、知らないうちに足の指まで愛撫してしまう…そんな状態でした。
彼があまりにエッチな声を出すから、普段そんなことしないのに、喉の奥まで彼のものをくわえこんだりもしました。そのときの反応がすごく良かったからです。あんな反応されたら、どんなに苦しくてもしてあげたくなってしまう。
ここは公共の場なのでこれ以上の描写は避けますが、二人の体が確実にひとつになって溶け合い、真っ白な高みへのぼったことは言うまでもありません。
その後、彼とのデートは必ず体の会話を含んだものになりました。愛していたのです。外でぎこちない態度を取る彼も好きだったし、二人きりになったときの濃密な愛情をすべてぶつけてくる彼も好きでした。こうなるともう、デートプランがどうなんて正直気になりません。なんとなくテレビで見たスポットに行ってみたり、興味の重なる部分で出かけたり、季節を感じられる場所へ行ったり、普通のことを普通にするだけで十分でした。
目が合ってちょっと笑うだけでお互いのことをわかっている気持ちがしました。
彼は、世間的に見たらモテるタイプではなかったと思います。でも、わたしの人生で一番官能的なセックスをしてくれたのは、間違いなく彼です。その後、些細な行き違いでお別れすることになってしまったのですが、嫌な別れ方ではありませんでした。「この世界で、恋人じゃない形でこれからも一緒に生きていこう、僕は君を応援する」と彼は言ってくれました。
「未練が残ってしまうから、嫌いだって言ってよ」
わたしはこんなことを言いました。
ふだんは人のいるところでスキンシップをするのを嫌がる彼でしたが、そのときは人目を気にするよりも、最後のキスを優先してくれたのでした。最後まで、とことん相手のことを理解している人でした。
セックスを楽しむために
必要なこと
その彼との付き合いがわたしを大きく変えました。
セックスは相手がうまいかどうかで決まるのではなく、お互いが楽しめるかどうかで決まるんだ、とはっきりわかりました。
それから、いろんな男性がわたしの上を通り過ぎていきましたが、確かに「うまい」と感じる人はいました。女性とおなじくらい女性の体のことを理解していて、確実に絶頂に導ける人とか、適度な強さと圧をかけて、ちょうどいいタイミングでのぼれる人などです。
中には、ガシガシ手マン男とか、そういう方もいましたが、「わたしはこの刺激だと強すぎるから、こんな感じがいいな…」と彼の手の上から自分の手で少し動きを変えてほしいと誘導したことがありました。その後彼は、ガシガシ手マンを止めてくれて、こちらの反応をよく見て愛撫してくれる、素敵なパートナーになりました。一緒にたくさんのセックスを楽しみました。
ガシガシくんは、自分がしたいことやされたいことをちゃんと言ってくれました。経験こそ少なかったけれど「気持ちよくしたい、なりたい」という気持ちの強い人でした。
伝説の官能男、不器用くんしかり、ガシガシくんしかり、二人ともけして器用でもないし、女性慣れもしていませんでした。
でも、とても素敵なパートナーとして過ごせたと思います。お互いにセックスを楽しんでいた、と思います。
これから男性と深く付き合っていく方には、どうか、必要以上に相手に期待をせずにベッドインしてほしいです。「最高の官能」は、相手が与えてくれるものではなく、二人でつかみとっていくものだからです。探しながら、許容して受け入れながら、気持ちいいこととそうでないことをちゃんとお互い理解しながら、自分の体を知ってもらい、相手の体を深く知りながら作っていくものです。
「恥ずかしい」、という雰囲気も大事ですが、ある程度の年齢になったら少し積極的に官能のドアを一緒に開けても良いと思います。
一度経験してみると、後から小説などでその行為が出てきたとき、それだけで絶頂に達するくらい体験と文章が一緒になって官能を高めてくれます。経験しておくのは、悪いことではないと思います。その方がむしろ落ち着いた結婚生活が送れる、くらいにわたしは考えています。
以上、「セックスのうまい男性」という概念ではなく「セックスを一緒に楽しめるパートナー」になっていこうという気持ちで官能の世界を楽しんでほしい、というお話でした。
※この記事は本ブログでははばかられましたのでこちらへ書きました。お付き合いいただき、今日もありがとうございました。
死へ向かう階段
死へ向かう
階段
右の乳房が痛い。
わきの下から乳房にかけて、ズキズキと痛みが走る。もともと少しの違和感はあったけれど、とうとう明らかな痛みを感じるようになったので、人間ドッグの予約を入れた。予約の電話があまりに手際が悪くて、こんな電話応対の病院であたしのガンが発見できるの? とディスってやりたい気持ちになったけれど、待たされるのは嫌だからその病院で検査を受けることにした。
検査は1か月半後ということだった。急を要さない人間ドッグなんてかなり先まで埋まっているものだ。そのあいだに発症して死んだらどうするつもりなんだろう。別にかまわないけど。
あたしが死を覚悟したのは人生で3回。
1回目は小学生のとき、酒に酔った父にベランダから突き落とされそうになったとき。マンションの9階だからたぶん死ぬ。2回目は20代前半で誰彼構わずセックスしていて、性病検査に行ったとき。エイズ検査も受けなさいと言われ、エイズについて調べていたらあたしは充分かかっている可能性があった。検査を受けるまで、あたしは「陽性だったら死ぬんだ」と半分死んだ気持ちで生きていた。3回目は20代後半でバイク事故やったとき。地面に倒れたとき、死んだと思った。
今度は4回目。
あたしは死ぬのがあんまり怖くない。死ぬよりめんどくさいことが世の中には多すぎるから。正直、あたしのアタマじゃ処理しきれないことが世の中には多すぎて。それを無理して処理し続けながら生きてくくらいなら、死んじゃった方が楽だろうってよく思う。だから、あたしは死ぬことをそんなに恐れてない。
もし、今度の検査で乳がんが見つかったら、世界を旅することに決めている。行ったことのない国へ行って、見たことのない景色をみて、食べたことのない食材を料理してみたりして。ちょっとお腹壊したってかまわない。それもまた旅の醍醐味。
そうやって死ぬ前の世界旅行を楽しみにしているあたしの心にはもう羽が生えていて、むしろ明日何時に起きなきゃとか考えてる仕事してるときのあたしより数倍元気で、生きることと仕事との関係性を、悪い頭でうーんと考えてみたりする。一瞬だけど。
眠る前の時間。
あたしはいつものように右の乳房に触れてみる。やっぱり違和感がある。固くて、痛い。でも、やさしく乳房をなでていると、べつの感情がわいてくる。それは性と愛とが混ざった感情。
あたしには、抱いて欲しい人がいる。これは誰にも言っていないけれど、その人はいつもあたしの夢の中に出てきて、あたしを抱いてくれる。ある時は冷たくしたりもする。いわゆる恋人みたいな妄想してるわけ。その人に、この右の乳房を優しく愛撫して欲しい。病気の事なんて彼は知らなくていい。ただ、彼のしたいようにあたしを愛撫してくれたらいい。その瞬間、あたしと彼は溶けあえるはずだから。
あたしは死へ向かう階段を怖いとは思わない。それより、今この瞬間彼に抱かれたい。
彼が抱いてくれないのなら、別の誰かでもいい。誰でもいいから抱いて欲しい。求めてほしい。あたしを必要としてほしい。
死へ向かう階段を上っていることすら忘れさせてくれるような甘美な夜があれば、日一日と死へ近づいていることなんて、あたしにはどうでもいいことだから。
少し痛む右の乳房に左手を置いたまま、あたしは右手で器用に携帯電話を弄り、近日中にセックスできそうな男にかたっぱしから電話をかけた。
完
憂鬱なんてあそこの気持ちよさで吹き飛ばしてしまえ
憂鬱なんて
あそこの気持ちよさで
吹き飛ばしてしまえ
あの寒い日。
「こんなオジサンでも良ければ、少なくとも今日の寂しさくらいは埋められるかもしれない。一緒に、出ようか」
わたしは言葉の意味を理解し、一緒に喫茶店を出た。男はまた手を繋いできた。喫茶店であたたまったので、男の手はなおいっそう温かく、熱いくらいだと感じた。
喫茶店を出て角を二回曲がったら、繁華街の裏手に位置する小さなホテル街に出た。いちばん綺麗そうなところに男はわたしを引っ張っていった。拒む理由は何もなかった。
男はホテルの部屋に入ると、コートを脱ぎ、わたしにもコートを脱ぐよう促した。白のタートルニットを着ているわたしの体の、胸のあたりを見ているのがわかった。わたしは恥ずかしくなって、男に背を向けてコートを壁に掛けた。その瞬間、男は後ろからゆっくりと、わたしを抱き寄せるようにして体を近づけてきた。
そこからは流れるようにすべてが始まった。一緒にシャワーを浴びて、体を洗いあった。何かされるかと思ったけど、男はまったくあせりを見せない様子だった。下半身だけは元気になっていたが、「ゴメンゴメン」と笑いながら言うので、本当に、怖さを感じなかった。
バスタオルを巻いた状態でベッドに移動すると、男は優しく布団をかけてくれて、寒くないかと聞いてくれた。そして、こう言った。
「彼にしてもらえなくて、満足できないことを、全部してあげる。君は、彼にされていると思って目をつぶっていてもいいよ」
「そんな…」
「触るよ」
男はわたしのバスタオルをはだけさせ、ソフトタッチで胸に触れてきた。もうこれだけで声が漏れるくらいに気持ちが良かった。いつも彼とするときも胸は触られているけど、触り方が違うからか、いつもより興奮してしまう。ゆっくり、ゆっくりと指先でわたしの胸を鋭敏にしたあと、今度はゆっくりと舌で乳首を舐め上げた。
「ああっ…」
我慢できずに声を出してしまった。あわてて自分の左手で口を覆う。男はわたしの反応を確かめた上で、舌を使って左右の乳首を丹念に舐めた。それから、首筋、耳元も舐めた。耳元で、キスはしないから、と言った。わたしは、してもいいのに…と思っていた。
その後男は、わきの下やわき腹を舐めながら、両手で胸を愛撫してくれた。もう充分にあそこが潤っているのが自分でもわかった。男はわたしの腰骨を軽く噛みながら「彼にしてもらってると想像してごらん」と言い、わたしの両足を広げ、あそこに顔を沈めた。しばらく眺めていたのだろうか。何も刺激がこない。わたしが自分のあそこをのぞき込むように男の様子をうかがうと、男はわたしの目を見て、
「すごくきれいだ」
と言った。そして、ゆっくり顔をうずめ、股関節のあたりからじわじわと舐め進めていく。中心にはいかずにゆっくりと。もう、もどかしくて仕方がないのだけど、自分からしてとは言えない。腰が動いてしまう。気持ちがいいところを、男の顔に近づけるように、少しだけ腰を動かす。
「そんなにここ、舐めてほしいんだ。いいよ、思いっきり舐めてあげる」
男はジュルっと音を立ててわたしのあそこに吸い付いた。わたしは悲鳴をあげた。もうその瞬間にイッてしまっていたのかもしれない。目の前が光った。それから少しずつ位置を変え、舌とくちびるの使い方を変え、吸い出すような動きを加え、わたしを絶頂の手前までもっていった。
わたしは途中までは彼のことを考えていたのだけれど、これをしてくれない彼のことを思い出すと寂しい気持ちになった。そして、今目の前にいる男の真摯な愛撫に心打たれた。体勢をずらし、男にあおむけになってもらう。さっき洗ってあげたこの体をわたしも舐めたい。そう思った。
わたしは「キスしていいですか」と聞き、男がうなずくと、自分からキスをした。唇を重ねて、それから食むように男のくちびるの感触を楽しんだ。男はわたしのくちびるの間から、少し舌を差し込んできた。わたしはそれに応じるように舌をからめた。そこからは、もう普通の恋人がするような濃厚なキスになった。
濃厚なキスのあと、わたしは男の体のあらゆる部分を舐めた。唯一、一番感じるところだけを残して。足の指までキスをし終えて、太ももまで戻ってきたとき、男はわたしの腰を自分の口元に引き寄せた。男の顔の前にわたしのあそこがむきだしになっている。そしてわたしの目の前には、男の固くなったモノがあった。先端にあふれている透明な汁を舌でなめ、亀頭全体にいきわたらせるように舌でなめまわした。それから、顔を傾けてサオの側面をくちびる全体で上下になぞった。根元の茂みにもキスをした。両手で陰嚢や太腿の部分をさわさわと撫でまわした。
わたしが亀頭に口をつけ、口に含むと同時に、男の責めが始まった。さっき寸止めされたままだったあそこが再び小さく痙攣し始める。男は舌とくちびるでわたしを快楽に溺れさせていた。そして、しばらくするとあそこに指を入れてきた。男のモノを口に含んでいたわたしは、くぐもった声で喘いだ。快感に飲み込まれないよう、意識をはっきりさせながら、男のモノを口内で転がし、くちびるをすぼめて扱き、陰嚢の感触を楽しんだ。
男のモノの先端から出る液体を味わい、男の巧みな愛撫に酔い、いよいよ高まってしまい、わたしはイキそうになってしまった。男はわたしの手を引き、体勢を変えさせた。ベッドにあおむけに寝かせ、男はわたしの横に寝そべったまま、わたしのあそこに手を伸ばした。さっきまで舌で刺激されていたところを、今度は指で刺激される。潤沢にあふれているそこは、少しの摩擦でもイッてしまいそうだった。
「イクところ、見せて」
「うん…」
男は手のひら全体であそこを円を描くように刺激した。その弱すぎる刺激にわたしは腰を突き出してしまったが、男はその微弱な愛撫で確実にわたしの秘豆を絶頂へ持っていけるのを知っていた。わたしの息がどんどん荒くなり、吐息に声が混ざるころ、男は微弱だった愛撫を少しだけ強め、速めに円を描いた。
「アッアッだめイク…!」
イクと言ってから数秒間、どうしようもない気持ちよさに支配され、目の前がぱぁっと明るくなった。そして男の刺激が徐々に強まる中、わたしの秘豆は限界を迎え、心臓がドクンと鳴り、太腿と腰まで痙攣させてわたしは絶頂に達した。
男はわたしのイクところをずっと見ていたらしく、もう一回見たいと言い、秘豆の愛撫を何度か繰り返した。恥ずかしいくらい何度もイッてしまい、わたしは自分から、
「もう…入れてほしい…」
と懇願した。男はわたしの上に覆いかぶさり、深いキスをした。乳首をやさしくまさぐった後、きちんとゴムをつけてから自分のモノをわたしのあそこにあてがった。わたしは恥ずかしいけれど、もう我慢ができなくて、少しだけ足を開いた。
ずぶ…と男のモノが入ってきた。ゾクゾクと全身が快感に包まれた。もっと…もっと奥まで来てほしい…。男はゆっくりと入ってきて、やがて根元までわたしの中に入ったようだった。男はわたしの中で小刻みにモノを動かしたあと、一度引き抜き、一気に突いてきた。わたしは大きな声をあげ、男の肩に手を回した。男は力強くピストンし、ある時は入口近くの気持ちのいいところをこすりあげ、しばらくそうしたあと、今度は一番奥を突いてきた。
「ああっ…! そこ、気持ちいい…」
喘ぎながら伝えたその言葉に呼応するように、男はわたしのポイントを探り当て、何度も何度も突いてきた。膣内(なか)でイッたことなんてなかったのに、もしかして、ここ突かれてたら…おかしくなっちゃう…。わたしは男を抱きしめ、男の耳元で思い切り喘いだ。そしていつからか、「イッちゃう、イッちゃう…」と繰り返していた。膣内(なか)で絶頂を迎える時が近づいているのがわかった。
男は体を起こして激しく腰を振り、そろそろいくよ、と言った。わたしはうん、と答え、目を閉じた。あ、いく…男がうめき、膣内で男のモノがグッと圧を掛けてきた。んっ、ああ、膣内でイキそびれちゃった…そんなことを考えながら男の体を抱きしめていた。
男はしばらくわたしの上に倒れこんでいたが、体を起こすと、キスをしてくれた。こんなことも、「彼」なら絶対にしてくれないことだった。
「先にいっちゃってごめん。次はちゃんと…」
言いかける男に対し、わたしは、
「いいですよ。今日もう一回でも、また今度会うのでも」
と笑い返した。さっきまで「彼」からのメールが無いことで欝々とした気持ちだったが、セックスをしたらなんだかどうでもよくなった。それよりこの男ともう一回したい。わたしはきっとこの男とのセックスで初めての膣内(なか)イキをするんだろうなと思った。
男の息が整ったら、もう一回男のものを口でしゃぶって元気にしよう。そして膣内(なか)の快感を思う存分享受したい。難しいことを考えるのは、その後でいい。そんなふうに思いながら、男の体にぴったりと寄り添った。
完
映画館での戯れ※18禁
※一人称ですが、小説です
こんにちは。今日は少し、エッチな話をしてもいいでしょうか?
わたしは過去に、お付き合いしていた男性に誘われて、エッチな映画館に行ったことがあります。当然ですが、エッチな映画が流れています。たしかその時は、くノ一系の映画が流れていました。映画を見るだけだと思っていました。
わたしたちが入ると、映画はすでに始まっており、薄暗い中、後ろの方の空席を見つけて座りました。映画館なのでみんな前を向いて席に座ってます。
エッチな映画館って、女性のお客がほとんどいないんですよ(今はわかりません。10年前はいませんでした)。わたしが席につくと、なぜかわたしの近くに席移動をしてくる人が何人かいて…最初それがどういうことかわからなかったんです。
その意味はすぐにわかりました。連れの男性が、映画の途中でわたしのパンティの中に手を入れてきたんです。公開プレイです。
こんなところで、やめて! って抵抗したんですけど、男性はわたしに耳打ちしました。
「みんな楽しみにしてるんだから、少しだけ我慢して」
確かに。もはやスクリーンよりわたしたちの絡みを見ている人が周囲に集まってる。さすがに真隣には座らず一席空けてはいるけれど、周りの男性たちは既にギャラリーと化している。ギャラリーは楽しませなきゃいけない。当時人に見られる仕事をしていたわたしは、なぜか素直にその理屈でもって自分を納得させました。
エッチな映画を見ていたから、パンティの中は少しだけ潤っていました。でも、音をたてるほどではなかったんです。連れの男性は、わたしの右側に座っていました。彼はわたしと何度か体を重ねたことがある人だったので、左手でわたしの足を開かせ、右手でパンティの中の秘豆を探り当てました。
「ちょっ…やめ…!」
「少しだけ、すぐここ出るから。ちょっと我慢して」
ささやくように言われ、少し、少しだからと我慢していました。彼の右手は蜜壺から潤った液体をすくい、秘豆に塗りました。その動きを何度か繰り返し、秘豆が充分に濡れたところで手の形を変え、手のひら全体であそこを円を描くように動かしました。秘豆だけをつまんで刺激されるより、潤った状態で全体を刺激されるほうが、当時のわたしはイキやすかったのです。
彼は左手でしっかりと足を開かせながら、スカートをまくりあげました。パンティの中で彼の手が動いているのが周囲の人に丸見えになりました。さっきまでは音がしなかったあそこも、もうチャプチャプといやらしい水音を立ててしまっています。
「もう…無理…」
懇願しましたが、彼は耳元で「イッたら終わりにしてあげる」と言いました。こんなところで絶対イキたくない。こんなところで…。そうしている間も、蜜壺からはどんどん液体があふれてきて、彼の動きは変わらないのに、快感の度合いはどんどん高まっていきました。あ…イケそう。すぐイケるかな…これで満足して、終わりにしてくれるかな…とわたしは目を閉じ、秘豆の刺激に集中し、自分を早く高めようとしました。
しかし、彼はそんなわたしを見抜いていたのか、手を止めました。「手を後ろで組みなさい」わたしが手を後ろで組むと、彼はさらに、イスに足を乗せ、M字開脚の状態で足を開いたままでいるように命じました。早く終わりにしたくて、わたしはうなずき、足をM字に開いて、縛られたような体勢をとりました。彼の言葉で、わたしは拘束されたのです。
彼はわたしのスカートを完全にたくし上げ、わたしの体を器用に動かしてパンティを片足だけ脱がせ、あそこをしっかりと露出させました。わたしの体を少し後ろ倒しにしました。足のつま先がイスから離れ、不安定な姿勢になりました。あそこが真上を向いて露出する体勢でした。ギャラリーの輪は、さらに近づいてきました。自分のあれをしごいている人もいるようでした。
彼はギャラリーを気にしていないようすで、イスの上であそこを丸出しにしているわたしをジロリと見たあと、左手でわたしのあそこをパックリと開きました。そして、右手の二本の指で秘豆をじかに挟んで円を描くように動かしました。そのほかの指は周辺の気持ちのいいところを撫でています。秘豆にじかに加えられる刺激は今までの比じゃなくて、一気にビリビリと体中に電流が走りました。声はもう我慢できなくなってしまいました。
彼の左手はわたしの服の上から胸をまさぐり始めました。ビリビリした刺激が、胸への刺激でより甘美なものへと変わっていきました。
彼は手慣れたしぐさで秘豆を刺激してきます。いつもよりゆっくり刺激してくるので、もどかしさで小さく、定期的な喘ぎ声を出し始めました。息に混じる定期的な喘ぎと、物足りなくて漏れるせがむような甘ったるい声。寸止めのような秘豆への愛撫がもどかしく、わたしは喘ぎながら彼に、
「…もう…イカせて…」
と懇願しました。彼はニヤリと笑って、わたしの着ているニットを捲り上げ、ブラジャーをずらし、乳首を直接摘んできました。きちんと両方の胸を露出させたので、ギャラリーの何人かは、わたしの性器や乳房を凝視していました。ギャラリーのほとんどは、わたしが絶頂を迎える瞬間を見ようとしていたのです。一人だけ、空いている方の乳首を指先で撫でる男性が現れました。遠慮がちにキュ、キュ、と摘むだけでしたが、敏感になっているわたしには強い快感でした。わたしは、この刺激にもいちいち声をあげてしまいました。
ギャラリーは活気付いていました。わたしは両方の乳首への刺激で、ああっと大きな声をあげ、のけぞりました。そして秘豆への刺激が同時にきました。絶頂に向かってただただ喘いでいました。感じている顔を他人に見られたくなくて、彼の方に顔を向けていたかったのですが、このあたりからはもう気持ち良すぎて、大きく左右へ顔を向けたりのけぞったり、映画館の狭いイスの上で、かなり動いてしまいました。
彼の指の動きが速くなり、秘豆がもたらす快感が高みにのぼりつめようとしてました。くすぐったさから一気に体をふんわり、快感の渦が包み、水音が速くなる。秘豆がトクン! と脈を打つ。あ…イク…その瞬間彼は乳首をギュっとつまみあげました。わたしは乳首への刺激にびっくりしたのと、イクのが同時にきてしまって、自分でもびっくりするくらい大きな奇声をあげてイッてしまいました。頭が真っ白になり、体が自分のものじゃないみたいにガクガクと揺れました。
「んっ…はあ…もう…いい…でしょ…?」
「今、ちゃんとイクって言わなかったよね? 本当にイッた? イッてないんじゃないの?」
彼はわたしがイッたことをわかっているのに、イクと言わなかったわたしを責めるような顔で見下ろしてきました。わたしの体は彼の手によって、何回か連続してイケるように調教されていたので、元々一度では許さないつもりだったのかも知れません。彼は、イッたばかりの秘豆へ、また刺激を与えてきました。もうその周辺はびしょびしょに濡れていました。
「やっ、やだぁ…くすぐったいって…やだぁ!」
身をよじるわたしを彼が強い声で制しました。
「少し我慢しなさい。ほら、ちゃんと手は後ろで組んで」
彼はわたしの姿勢を責めやすい体勢に直しました。そして、わたしの大好きな、膣に指を入れて抜き差ししながら秘豆を刺激する責めに変えてきました。このやり方で初めてイカせてくれたのは、彼でした。彼のやり方なら、わたしは膣の中と秘豆の両方で感じることができたのです。初めは1本、やがて2本の指が膣の中に挿入ってきました。
じゅぷ、じゅぷ…
指を抜き差しする水音が映画館に響きます。気持ちいい…中がこんなに気持ちいいなんて…わたしは恍惚としました。でも、イッたばかりのわたしの秘豆は、まだわずかに痙攣していて、まだ敏感すぎる状態でした。秘豆と乳首が、もう、くすぐったくて仕方がないのです。秘豆の上を、ぬるっという感覚で指が通るたび、くすぐったくて我慢ができません。身をよじって抵抗しましたが、彼はそれを許してはくれません。足を閉じようとすると厳しく制されました。
ギャラリーの男ふたりが、わたしの左右の足それぞれを開かせ、動かないように押さえる手伝いに加わりました。乳首を摘む男も、肩のあたりを押さえて動けなくしてきます。男3人と彼、合計4人の男の手によって、わたしはさらなる絶頂に向かうことになりました。後ろで組んだ手は、彼にいいよと言われるまで、ほどかずに我慢しなければなりませんでした。
「やだ、やだぁ…んっ…くうっ…ううん……あっ……ダメ、まだくすぐったいって…」
「すぐよくなるから、ちょっと我慢しなさい」
奥歯を噛み締めて、くすぐったさを我慢していました。彼は中指と薬指で膣の中をピストンしながら、親指で秘豆をクリクリとこね回しました。わたしの左側の男は左の乳首をさっきより大胆に刺激してきました。わたしの足を開かせている後ろの席のふたりも、足を開かせながら内ももを撫でてきました。首筋を撫でる別の手もありました。体中の気持ちがいいところを同時に刺激されて、わたしのくすぐったさは、また快感へと変わっていきました。秘豆が快感を認識すると、膣の中がさらに感じやすくなりました。彼の指の抜き差しは、セックスとおなじくらい気持ちがいいのです。
じゅぷじゅぷという水音、ヌルヌルと動く秘豆の上の親指、体中を撫で回す男達の欲望にまみれた指先…
「アッ…やだ…やだぁ…くっ…イヤ……アッいい…いい…あっ気持ちいい…アッだめ…もう、もう、イッちゃう…」
「いいよ、イク時は大きい声でイクって言いなさい」
彼の「いいよ」でわたしはすべてから解放されました。彼は膣への刺激をより深くし、親指の腹で秘豆を小刻みに刺激しました。限界でした。もう、我慢なんてできませんでした。
「…アッ、アッ、アッ、イヤッ、だめイク…ッ!! イクぅ……!!」
何秒間痙攣していたのでしょうか。
わたしはイクと声をあげたあとも、痙攣が収まるまでの間ずっと、高い声で鳴き続けました。そしてしばらく体をビクンビクンと痙攣させたあと、気を失いました。
…気づくとわたしはパンティをちゃんと履いて、彼にもたれかかっていました。快感の余波でぐったりしているわたしを彼は抱き上げるように立たせ、わたしたちは映画館を出ました。ギャラリーの皆さまは拍手をして見送ってくれました。(本当です)
外の風が気持ちいい。彼のにおいが気持ちいい。
「…物足りないだろう。最後までするぞ」
彼はわたしを、映画館近くのホテルに連れていきました。長い長い夜、その日のエッチは、それまでのどんなエッチよりも興奮してしまったのを覚えています。
いっぱい気持ちよくなって、いっぱい彼を気持ちよくしました。今でもあの夜を思い出すだけで体が熱くなるのです。最後までお話を聞いてくれて、ありがとうございました。
では、またお会いしましょう。
【完】
久夫
久夫
※グロ注意。汚い系がだめな方、食事中の方は読むのをお控えください。
ゴロゴロゴロ……「その時」が近いことを知らせる音が鳴っている。雷の音ではない。ゴロゴロと不穏な音を鳴らしているのは、久夫(ひさお)の腹だ。
「急いで帰ればきっと大丈夫だ」
時刻は午後五時、辺りはまだ明るい。独身フリーター三十五歳の久夫は駅から十分の道のりを急いで帰ることに決めた。今日は派遣会社へ登録に行った帰りだ。今までは力仕事系の派遣会社だったが、体がきつくなってきたので事務職に回ろうと思い、事務職中心の派遣会社に登録することにしたのだ。
元々、体力に自信のあった久夫は、高校を卒業した後、何も考えずにパチンコ屋やイベント設営のアルバイトを転々とした。仕事に慣れると飽きてくるので違う仕事に就く、その繰り返しだった。年を重ねる中で、語学や技術の資格取得を勧めてくる友人もいたが、面倒くさいという理由だけで今日まで、力仕事のアルバイトで食いつないでしまった。同僚は年下ばかりになり、いつからか久夫はどこへ行っても一人になることが増えていた。性格も若い頃に比べて暗くなった気がする。
ゴロゴロ……ゴロゴロゴロ……腹が痛む。駅のトイレを使わなかったことが悔やまれる。久夫の帰宅ルートは駅を離れると川沿い一本道で、そこには住宅以外の施設は何も無かった。小さな町なのだ。
久夫は午後三時半ごろ、自分で作ったおにぎりを食べたことを思い出した。コンビニの「焼肉おにぎり」が大好きな久夫は、昨夜自分で作った牛肉炒めに軽く味をつけておにぎりにし、今朝それを持って家を出た。午前の登録会が長引いたので、おにぎりを食べたのは午後の登録会の後であった。日中は暑かったし、炒めた玉ねぎが少し酸っぱかったが気にせず完食してしまった。「やっちまった」と久夫は思った。
久夫の腹はゴロゴロを通り越し、グルグルに変わってきている。川沿いの道を歩く。なんだか通りが騒がしい。普段は人通りの少ない道なのに、今日はみんな土手を、おなじ方向に向かって歩いている。浴衣を着ている者もいるから、どこかで祭りでもあるのだろうか? しかし今の久夫はそれどころではない。
「ああ……間に合わないっ……」
早足で歩いているが、目の前が白んできた。普通の腹痛じゃない気がした。完全に食あたりのようだ。我慢できる痛さではない。久夫は「最悪の事態」を想像し、右手をスーツの尻に当てて押さえる。
歩く。歩く。歩く。走ったら振動で尻の筋肉が緩んでしまいそうだから、ひたすらに歩く。早歩きを続けていると、体がその速度を覚え、ひざから下がヘナヘナと変なしなり方をする。ああ、競歩ってこういう競技なのかなあと頭を一瞬でも腹と尻から遠ざけようとする。あと三分で家に着く。なんとか持つか。万一の場合はスーツのスラックスを汚してしまう。その時はどうしようか。経済的なことを考えると正直スラックスを買いなおすのはキツイ。ええい、あと二分もあれば着く、ままよ!
自分を鼓舞し、ヘナヘナ競歩を続ける。アパートが見えてきた。人通りの多かった川沿いから小道を入ると、いつもの静かな久夫のアパートだ。右手をスラックスの中に突っ込み、パンツの上からぐっと尻の穴を押さえる。あと少しの我慢だ。アパートの入り口に差し掛かる。久夫の部屋は二階の階段を上がってすぐの部屋だ。階段をトントンと、尻を刺激しないように上がる。
グルグルグルギュウウウウウ……久夫の腹はもう限界を超えている。久夫はカバンから鍵を取り出そうとする。キーホルダーを付けているからいつもすぐに取り出せる。しかし、こんな時に限って、見つからない。久夫はカバンをひっくり返す。派遣会社のパンフレットやノート、ボールペンが飛び出す。全く使ったことのない名刺入れも飛び出す。
「うあああああ……!!!」
久夫は弱く叫んだ。なんで鍵が無いんだ! もう家は目の前だ! ガチャガチャとドアノブを回してみるが、当然開かない。もう限界だ。どっと汗が噴き出す。久夫は最後のあがきでしゃがみ込み、革靴のかかとで尻の穴をふさぐように片膝をついた姿勢をとった。尻に栓だけは出来た形になったが、中から押し寄せる勢いの方がはるかに大きい。久夫はカバンにまだ開けていないチャックがあることに気づく。そう言えば今日の登録会のときに、待ち時間の手持ち無沙汰を埋めるためにカバンの整理をしたのだった! チャックを開けると鍵はあった。
久夫はしゃがんだままドアの鍵を開け、尻に栓をしている右足のかかとを右手で持ち、左足だけでケンケンをしながら部屋に入った。ベルトを左手で外しながらトイレを目指す。開ける。便器へと腰をおろす。刹那、それまで久夫を苦しめていた腹の中の物が勢い良く便器へと放出されていった。全身の、力が抜けた。
「ヴォエエエエ……ヴォエッ」
安心したのもつかの間。久夫の食あたりは想像以上に重かった。尻から出せるものを全部出したが、まったくすっきりせず、次の瞬間久夫はそれまで尻を置いていた便器に顔を突っ込むことになった。吐けるだけ吐いてみたが、まだ腹はすっきりしない。再度ギュルルル……と鳴る腹に、急いで体勢を変え、便座に腰を下ろす。同時にこみ上げる吐き気……。久夫は約二時間、トイレにこもりきりだった。食あたりは、本当にヤバイ時は上から下からのお祭り騒ぎだと言うが、本当なんだなと実感した。こんなに苦しい食あたりは人生で初めてだった。吐きながら、「これから玉ねぎが食べられなくなりそうだ」と久夫は思った。
心身ともに疲れきり、やっと出すものを出し切った久夫は、脱ぎっぱなしの靴を片付け、玄関前にぶちまけたままだったカバンを拾いにドアを開けた。辺りはすっかり暗くなっている。アパートの廊下には、ぶちまけたままの財布や派遣会社のパンフレット、ボールペンや一度も使っていない名刺入れがそのまま転がっていた。この二時間あまり、アパートの住人は誰もこの廊下を通らなかったらしい。ひとつずつ拾い上げ、カバンにしまっていく。
ドン! ヒュウー……ドン! ドン!
川沿いの土手から花火が上がった。オレンジ、緑、ピンク、紫。夜空に映えるけばけばしい配色の花火が、久夫のアパートからよく見える。住人はみんな、花火を見に出かけたのだろうか。だとしたら、しばらくこの廊下は誰も通らないだろう。小さな祭りの花火だからか、凝ったものは無く、普通の花火の連続だった。しかし、久しぶりに見る花火は久夫の目をくぎづけにした。最初はただその光のまぶしさや音に集中していたが、やがて久夫は、誰かと一緒にいる未来に思いを馳せ、夏の終わりの人恋しい感情に身を任せていた。ぬるい風が、からっぽになった久夫を撫でる。
水分と栄養の抜け切った体で、久夫はこれからの人生を、有意義に生きたいと強く思った。誰かを幸せにして、自分もささやかな幸せを感じたい。こんな花火の夜には一緒に出かけて行きたい。そんなふうに思ったのだった。
~完~
補足
のべらっくす「短編小説の集い」に参加しようと思って書いていたのですが、グロいものを公開するのは憚られると思い、投稿は見合わせました。次回はテーマに沿った、誰が読んでも不快にならないものを書きたいと思います(汗)
【納涼フェスティバル参加作】明日へ続く選択
こんにちは。貫洞です。
【夏休み特別企画】納涼フェスティバルに参加させていただきます。
怖い話、大好きです。
これから書くお話は、単品で読んでいただいてももちろん大丈夫ですが、「第10回短編小説の集い」参加作「ひみつの花園」とリンクしています。
それでは、今回もどうぞよろしくお願いします。
明日へ続く選択
そこは「小屋」と呼ばれているが、正確には「屋敷」の広さを持っている。九州の南部、海のきれいな町から車で四十分ほど山へ入っていくと、通常人が立ち入らない不気味な場所へ出る。そこへ行くのはある目的を持った金持ちの男(あるいは女)ばかりだ。
「花園」という隠語で呼ばれるその場所は、事情があって家へ帰れない年若い女(少女と言ってもいい)や、家庭の貧しさからそこへ売られた美しい女が働いている。働くと言っても、仲居をするのではない。するのは男とベッドの相手だ。
「花園」へ集まる客は、全国の経営者や裏稼業者、トレーダーや遺産を使いきれない者など、さまざまな人間たちだ。共通しているのは、使い道に困るくらいの金を持っていること。そんなふうになった人間はどこか偏る。やたら人に金を施したくなる者もいれば、目的を見失ったように腑抜けになる者もいる。しかし、貪欲さを失わない者も一定数存在する。彼らは自らの性癖を完璧に満たしてくれる場所を求める。そして世の中とは面白いもので、金の集まる場所にはきちんと「金を使わせる場所」が生まれるのだ。
「花園」を利用して二年になるエス氏は、自らをアルファベットでSと表現する。彼は若く美しい女の体を欠損させることに興奮する、筋金入りの変態だ。エス氏の本職は医師であり、痛みを伴わせる方法も、伴わせない方法も知っている。どういうやり方で欠損させるかは気分と女の返答次第で決める。
「花園」に五体満足の若い女が入ったと聞きつけて、エス氏は早々にスケジュールを調整し、花園へと向かった。エス氏はこだわりの外車を運転しながら、どんな女なのか想像をふくらませていた。
「おかえりなさいませ、エス様」
屈強な体を小さく折りたたんで、折り目正しいスーツ姿の男が出迎える。「花園」の運営は屈強な男が集まって秩序正しく行われている。施設内での女の管理をしっかりしているのもエス氏が「花園」を気に入っている理由のひとつだ。パイプをくゆらせながら、スーツの男からアルバムを受け取る。
「新人の、亜由子でございます」
写真には、胸までまっすぐに伸びた黒髪、うつろだが整った目鼻立ちの女が写っている。規則正しい労働下におかれていたのであろう細身の体、手で隠している乳房は適度に豊かで、ページをめくるとやはりむっちりと豊かな肉付きのヒップがエス氏の肉欲を駆り立てた。
「せっかくだ、その亜由子と遊んでみる」
エス氏が答えるとスーツの男は頭を下げた。小さな声で「身体欠損は、どうか1年お遊びの上、気に入られましたらお願いいたします」と伝えた。うん、とエス氏は答え、その日の遊びが始まった。
広い屋敷の一室で、エス氏と亜由子が引き合わせられた。亜由子は「花園」へ来てまだ一週間だという。ここに慣れる時間を考えると、客を取るようになってまだ二、三日であろう。エス氏がどういう嗜好の持ち主なのかを恐々と探るように三つ指をついて挨拶をした。高級そうな生地でできた花柄の薄手のスリップドレスの中で、細いウエストと豊かなバストのコントラストが美しく透けている。
エス氏は医者の仕事で身につけたやさしい問診能力で、患者に話しかけるように亜由子へ話しかけた。15分も話すと、亜由子はすぐに本性を表した。自分は助かりたい、両親が心配している、どんなご奉仕でもするから、わたしを助けてほしい、ということを、後ろに流した黒髪を揺らしながら涙を浮かべて訴えてきた。
過去にエス氏が遊んだ女の中には、助けを請う女が何人もいた。そういう女はえてして客を楽しませるのが下手で辟易していた。少女の頃からここで飼いならされている女の方がずっといい。エス氏は従順に男に従う少女の体を欠損させることは無かった。過去に四肢を欠損させてきたのは往々にして、「わたしは無理やりここに連れて来られた」などと言う生意気な女だった。しかし生意気な女ほど、欠損させた瞬間にショックで自我を失い、ただの生きたダルマになるのだ。うつろな目をして、食事を取ろうとしない。もちろん点滴をして死なぬように生きながらえさせるが、性の奉仕をする気力を失ったダルマはもう要らない。何か楽しい遊びは無いものか。エス氏は考えた。
「亜由子。僕は三人でするのが好きなんだ。ここにエマを呼んでもいいかい?」
エマとは、幼少の頃からここで働いている従順な少女だ。客の男を全て自分の父か恋人だと勘違いしている生粋の売春婦であり、エス氏はエマのことを特段可愛く思っていた。
10分ほどで同じ花柄のスリップドレスを着たエマがエス氏の部屋に現れた。亜由子はエマと会ったことはなく、あいさつをしたが、エマは少女特有の人見知りの態度で、エス氏にだけ愛情のまなざしを向けていた。そのまなざしは父に向けるような、恋人に向けるような純粋な愛しさが込められていた。栗色の髪と淡い茶色の目が異人を思わせる少女だった。
エス氏とエマは、自然に絡み合い、唇と肌を重ね合わせていく。エマは心からうれしそうにエス氏の服を脱がせ、エス氏に少し触れられるだけで女の声で鳴いた。亜由子より十センチは小柄であろうエマの体がエス氏によって跳ねる。取り残された亜由子にエス氏は言った。
「この子より僕を楽しませてくれたら、さっきの願いを叶えてあげよう。さあ、こっちへ来るんだ」
亜由子は我に返り、エス氏を奪い取るように抱きついた。早く早くと言わんばかりにエス氏を愛撫する。エマは一瞬戸惑ったが、エス氏の空いた左手を自分のちいさな乳房へと導き、エス氏の指が先端に触れるたびに声をあげ、がまんできないとばかりに右手で自分の性器をいじり始めた。
最初はぎこちなかった三人での性戯も入り乱れて、亜由子とエマは互いの乳房をいじったり、互いを絶頂に導いたりした。エス氏は亜由子が絶頂に達した瞬間を見逃さず、まだ小さく痙攣している亜由子を一気に貫いた。亜由子の全身は女の悦びに満たされそうになったが、目的を見失わないよう、きつく拳をにぎりしめて快楽を体の中のどこかへと押し込んだ。エス氏を楽しませて、ここから出るんだ。
亜由子はエス氏の体に手足を巻きつけ、強く早く腰を動かした。さあ! さあ! と急かすような腰の動きは性戯の愉しみを微塵も感じさせない、いじけた魂の表れだ。なぜ、性戯の愉しみを知ろうともせず、自分の要求を通すことばかり考えるのだ、物事の本質を知らぬこの馬鹿女め。
エス氏は亜由子の中には吐精しなかった。下心のある性器はつまらない。絡みつく亜由子を振りほどいて、自身をエマの中に入れなおす。エマの中は適度なぬめりと絞るような粘膜で絡みついてくる。エス氏はすぐにエマをうつぶせにさせ、バックの形になった。後ろからエマを突く。後ろから入れられると苦しいのか、うつ伏せのエマは手で口を押さえ細い声で喘いでいる。エス氏はエマの細い両肘をつかみ、エマの上半身を反らせる。角度が変わって気持ちがいいところに当たるのか、エマは高く大きな声で鳴き始めた。おとなしいエマが必死に首を反らせて喘ぐ姿、エス氏の思う通りの体勢で快感をくれるエマに、エス氏は心から満足して何度か素早く腰を振り、エマの中にたっぷりと吐精した。
「わたしの中にも、出してください……」
泣きそうな、悔しそうな顔で亜由子がジットリとこちらを見つめてくる。つまらない女だとエス氏は思った。ふと、ある案が頭に浮かぶ。エス氏は最近「リアル脱出ゲーム」という遊びを知った。頭の回転と体力、チームの役割分担などが求められる。少人数になるほどエス氏は強かった。そうだ、亜由子にゲームをさせ、クリアしたらここから出してやることにしたらどうだろうか。 女一人ここから出してやる金額はたかが知れている。それよりこの女が死ぬ気で脱出しようとする姿が見てみたい。
エス氏はA・B・Cのカードにそれぞれゲームの内容を書いて亜由子の前にカードを伏せた。
A.排便排尿を24時間我慢する(ゲームスタート前に排便排尿可、漏らした分は体内へ戻すこと)
B.毒サソリと毒蜘蛛を放った密室で24時間過ごす
C.青酸カリの入った水とただの水、2つのうち1つを飲み干す(見た目ではわからない)
「簡単なゲームばかりだよ、まずは三枚のカードから一枚引いてごらん」
エス氏はこれから始まる24時間あるいは一瞬のゲームを想像し、吐精したばかりの自身に再度血液が集まり始めるのを確かに感じていた。
~完~
【納涼フェスティバル参加作】トイレ無限ループ
こんにちは。novelsのブログへようこそ。
夏らしい、ちょっと怖いお話しにチャレンジしました。
よろしければお付き合いくださいませ。
迷いましたが、こちらも納涼フェスティバルに参加させていただこうと思います。
よろしくお願いいたします。
トイレ無限ループ
星野美雪は一人暮らしを始めて二度目の引越しを決めた。何件か物件を回ったが、エレベーターの無い五階建てのその物件は、驚くほどに条件が良かった。
最上階角部屋で目の前を川が流れており、最寄駅からは驚きの徒歩一分。(階段をかけおりる時間は含まない)美雪の働く「オジサンの街」と呼ばれる都心の駅までも電車で直通二十分。便利だ。
美雪は「オジサンの街」にあるオフィスでコールセンターの仕事をしている。肩まである髪はダサくない程度にカラーリングし、コンプレックスの丸顔を隠すためにメイクはしっかりとしている。美人ではないが今風、という言葉が美雪にはぴったりだった。
家賃は2DKで六万円という破格。安さの理由を不動産屋に聞いてみたら「エレベーターが無いから借り手がつきにくい」とのことだった。なるほどと納得し、美雪はその部屋を契約した。二十代後半で貯金もしっかりしたい美雪にとって、その部屋は魅力的だったのだ。引っ越してすぐ、階下の四階角部屋に住む管理人に挨拶に行った。家主の親戚だというその男は、三十台代半ばの、薄暗い部屋で何をしているかわからない不気味な人間だった。
美雪の生活は都心に近くなった分、充実した。それまでは都心に出るのに一時間半かかっていたので、休日に街へ出ることはほとんどなかった。美雪の休日といえば、掃除と洗濯、少しの読書で構成されていた。しかしこの引越しを機に、休日は人がたくさん集まるターミナル駅でウインドウショッピングをしたり、身軽に出かけるようになっていった。
半年を過ぎた頃、美雪は男関係にだらしなくなり始めた。久しぶりの男友達と飲みに行くと、高い確率で一夜をともにしてしまう。今まではこんなことはなかったのに、おかしいなと思いつつも、惰性でそのままの生活を続けた。よく遊ぶ(体の関係含む)男友達から、ハプニングバーに行こうと誘われたこともある。興味本位で行ってみたら乱交に巻き込まれて、美雪はその日だけで四人の男と性交した。自分でも淫乱を自覚し、美雪は自分に自信がなくなっていった。
迷いの中、ある占い師に、引越しを機にそのような状態になったと相談すると、
「そこに元々いる霊と呼応してしまうことがときどきあるのよ。それが悪い霊だと人間に影響も与えるわ」
という答えが返ってきた。どうしたら良いのかと答えを請うと、
「相手にしないこと」
「自分の意識をしっかりと持つこと」
「それでも負けそうな時にはその場を離れることよ」
とのことだった。美雪は、あと半年か一年で引っ越そうと心に決めた。それまでは自分の意識をしっかり持って頑張ろうと思った。
ある夜、美雪はどうにも寝苦しくて寝付けなかった。何度寝返りを打っても眠れない。時計を見ると夜中の二時だった。ふと、尿意を覚えてトイレに行って用を足そうとするが、なにかがおかしい。バス・トイレ別の美雪の部屋のトイレは、ウォシュレットの無いシンプルな洋式だ。トイレの中に洗面台がついており、鏡がある。
トイレに入り、排尿しようとするその瞬間、「自分はまだベッドにいるのではないか」と疑いを持った。尿道をきつく締めて意識をはっきりさせる。気づくと自分は枕に頭を載せていて、ベッドにいるのだった。排尿してしまわなくて良かった。今度こそトイレに行かなくてはならない。
何度か目をしばたたかせ、トイレまで歩く。自分の意思でここまで歩いてきたことを実感し、今度こそと尿意を高めていざ排尿…。また美雪は不安になり、自分の頬を痛いほどに何度も叩いた。杞憂は現実だった。やはり意識をはっきりさせるとベッドで寝ている自分が目を覚ますのだ。これを何度か繰り返しているうちに、美雪は恐怖を感じた。何かいやな世界の入り口のように感じた。
トイレのループが九回目を超えた時、美雪は金縛りにあってしまった。ベッドで金縛りにあい、動けない。人生で初の金縛りだったが、美雪はかえって安心した。尿意は我慢できない方ではない。仕事柄、トイレにすぐ行けないことなどざらにある。もうトイレは我慢してしまおうと思った。ここがトイレなのかベッドなのかわからないループはいやだ。もう面倒くさい。このまま金縛りに身を任せて眠ってしまおう。美雪は目を閉じた。
「手放したな」
どこかで太いようなしゃがれたような声が聞こえた気がした。美雪は金縛りを理由に眠ろうとしていたので、さして気にも留めなかった。きっと気のせいだ。
翌朝、金縛りも解けて動けるようになっていた。美雪は朝の習慣でトイレに行き、用を足した。はちきれんばかりの尿がたっぷりと放出され、すっきりとした気分になった。しかしそれとは逆に、頭の中心にもやがかかったような、すっきりしない気持ちがある。
排尿を済ませ、トイレの中にある洗面台で手を洗う。洗面台の鏡を見る。鏡に映る美雪の背景には、朝だというのに全体に暗雲が立ち込めており、美雪をつつむようにどす黒い空気があたりを漂っていた。美雪の肩の上には、ひときわ黒いかたまりが鎮座しており、簡単に離れてくれる気配はなかった。
一週間後の早朝、美雪の部屋のまわりに警察とテレビ局、野次馬が集まっていた。
「ただいまS区の事件現場に来ております」
「殺害されたのはK県在住の三十台の男性、同じくK県在住の二十台の女性です。警察では現在、三人の関係を探っています」
「現場から中継でした。男女を殺害した容疑で逮捕されたのはS区の星野美雪容疑者です。容疑者は、犯人はわたしじゃない、と繰り返していますが、現場には凶器と見られる包丁が残されており、他の人物が立ち入った形跡はなく、現在動機を探っています」
占い師はテレビを見ながらため息をついた。占い師は同じ職業の夫に話す。
「あの子だわ、私甘かった。きっとあの子、憑依されたんだわ」
「きみ、この子を視たのか。そのときはまだ完全に憑依されていなかったのか?」
「ええ、明らかに土地の悪い霊の影響を受けているのはわかったの。だけど取り憑かれてはいなかったのよ。何か呼応するような出来事があって、完全に取り憑かれてしまったんだと思う。もう取り返しがつかないわ!」
「呼応のタイミングを、あいつらは簡単に作ってくるからな」
占い師は夫の胸に崩れ落ちた。
取り調べ室。美雪は必死で自分は殺していない、と繰り返す。しかし同時に不可思議な感情に支配されていた。
「積年の恨みが晴らせた」
という得体の知れない満足感。それが何なのかはわからないが、あの黒いかたまりが見えるようになってからの行動を、美雪はほとんど覚えていない。覚えていないのに、どうやってあの男女を部屋に呼んだのかを聞かれるとすらすらと答えられるのだ。美雪は半ば操られるようにふたりを殺した。
美雪を守ってくれるのはせいぜい精神鑑定による異常での減刑だ。この世界にはたくさんの恨みつらみが飛び交っているというのに、それに取り憑かれて行ってしまった殺人を弁護してくれる法律はまだない。美雪に取り憑いていた黒いものは、二人を殺し終わるとすぅっと姿を消してしまった。
ぼうっとする頭の片隅で
「これからあの部屋に住む人は、いいな。事故物件だからわたしより安く入れるんだろうな。しかももう、何もいないんだよ。だって“あれ”はもう完全にわたしと同化しているんだもの」
美雪は自分の運の無さを嘆くようにくすくすと笑い続けていた。
☆END☆