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スイミングコーチ真理子の憂鬱【2】※官能小説注意

 




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【2】からはほぼ官能小説です。

スイミングコーチ真理子の憂鬱【1】 はこちら

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スイミングコーチ真理子の憂鬱【2】 

 

 市営スポーツジムのスイミングコーチ兼監視をしている真理子と、たまたま真理子が監視をしているときにプールへ泳ぎにきた男。ふたりは二十二時の閉館時間後、強い雨の中帰路についていた。市営スポーツジムの出口で男は真理子が歩いて帰宅しようとしているのを見つけ、送りますと声をかけたのだった。

 ふたりは不思議な空気をはらんだ車内で並んでいたが、ぽつりぽつりと交わす会話がやっと流れはじめていた。


「中学までやっていた水泳をやめてまで夢中になったことがあったんですね。一体なんでしょう?」
「……僕の話ばっかりじゃなく、ええと……」
「真理子です。加藤真理子」
「すみません、僕は波多野慎吾といいます。それで真理子さんはずっとここの仕事を?」
「もう二年になります。たまたま今日はバイトの子が一人欠勤してしまったので代わりに監視に入ってましたけど、本業はコーチです」

「コーチか! こりゃ失礼しました。そういえばたまに早く着いたとき、小学生のスクールをやってますよね。そうか、真理子先生か」
「そんな、やめてください」
「でも実際、そんなふうに呼ばれてません?」
「……呼ばれてます」

 そこまで話したところで、車は真理子の自宅近くの交差点に着いた。

「そこを右に曲がって、薬局の看板のところで大丈夫です。そこからすぐですから」
「わかりました」

 信号待ちで止まる。右に出したウィンカーがカチカチと音を立てている。

「……あの、真理子先生」
「はい?」
「初対面であつかましいのですが、夕食はお済みですか?」
「まだです」
「良かったら、一緒にどうですか? こんな時間なのでファミレスとかになっちゃいますけど」
「……ご迷惑でなければ」
「じゃあ、この道沿いのファミレスにしましょう」


 このあたりで道沿いにあるファミレスはひとつだけだ。メニューが豊富なので、真理子もたまにそこで友人とおしゃべりをすることがあった。今日はこれからこの波多野という男とおしゃべりをする。人生どこで何があるかわからないものだと思った。ウィンカーは消え、カチカチという音も消えた。車はこれからまっすぐに、進むのだ。
 

 
 真理子が異性と二人で食事をしたのは二年ぶりだった。この日は普通にファミレスに入り、普通に食事をとり、たわいない話をしただけだったが、真理子にとっては非日常の出来事だった。目を配るつもりなどないのに、どうしても波多野の指の節や、喉仏、肩のラインなどに目がいってしまう。顔を見て話しているときは、波多野が泳いでいるときのしなやかな筋肉の動きを思い出していた。

 波多野はとても生真面目で、食事を終えると頃合いを見て「送りましょう」とスマートだった。帰り際もとてもあっさりとしていたことに、真理子は拍子抜けした。

「わたし、何を期待していたんだろう……」

 帰宅した真理子は一人、赤面した。すっぴんの市営プール職員が、たまたま雨に降られ、施設利用者が車で送ってくれた。ついでにご飯も食べた。ただそれだけのことだ。何も取り立てて動揺することじゃない。バスタブに湯を張り、鏡の前で裸になる。前髪ごと一つにまとめていた髪をほどき、両手を後頭部にまわし、自分の髪をさわってみる。頭頂部から首のところまで撫でおろし、髪を左右にわけて胸の前に垂らす。薄い胸を隠すように髪を垂らしてみると、自分の中の女性性と向き合うような気分だった。

 バスタブに浸かってからも、頭の中は波多野との会話がリフレインされていた。さっきまで他人だった男と食事をした、その事実が真理子の心にいつのまにか作られていたバリケードを壊したように感じた。「もっと、自由でいい」真理子は口の中でそっとつぶやいた。

「だけど、施設利用者はだめ。仕事場に男女のことを持ち込みたくない」

 真理子は自分の心のある部分が決壊するのを感じたが、寸前のところで一部分だけを守った。波多野とは深い仲になりたくない。今日の楽しかった時間とは裏腹に、施設の中に自分の女性性を持ち込みたくないと強く思った。わたしはあのプールでは「真理子先生」なのだから。

 バスタブの中で真理子は自分の仕事への真面目さに苦笑いした。そして、シャワーを適温にしてバスタブの中へと沈める。「ちょっとだけ……」シャワーの圧は中くらいのまま、秘部へとあてがう。少し当てただけでくすぐったくて腰がひける。いつもは湯船の中ではしない。するのはベッドの中だけ、それもたまにだ。でも今日は我慢できそうにない。シャワーの圧を少し上げる。左手で自分の小さな乳房を揉み、ひとさし指の先で先端を刺激する。シャワーを秘豆に集中して当て、快感のうねりを愉しむ。シャワーを足ではさんだまま、胸の先端を両手で刺激し、高まりが胸のすぐ上に上がってきて、少し声が出る。このままいきたい。水圧を「強」にして、シャワーを秘豆に押し当てる。胸の先端は左の方が敏感になってきて、秘豆への刺激とともに真理子を絶頂へと導く。

「んっ……イク……」

 真理子は登りつめた。視界が白くなった。バスタブの少しぬるくなった湯の中で、一瞬からだを痙攣させてすぐ、脱力した。ぬるりと滑る秘部はちっとも落ち着いてくれなくて、真理子はベッドの中でもう一度、さっきの行為を繰り返した。自分でするやり方はそんなに知らない。もっと……もっと……。真理子の中のなにかが、静かに目を覚ました夜だった。



 翌日からも真理子は真面目に勤務し続けた。受け持ちのクラスへの指導もしっかりと行い、監視のバイトにも厳しすぎない程度に「シフトはちゃんと確認すること」と注意を入れた。真理子が仕事を上がる十九時半に、波多野が泳ぎに来ていることもあった。さすがにあの夜の直後に「先日はありがとうございました、助かりました」と話をしたものの、それ以降、真理子はコーチの声を崩さずに「こんばんはー」とあいさつを返すのみとなった。波多野が何か言いたそうにしているのは感じていたが、真理子は笑顔でシャットアウトした。


☆☆☆


 木曜日。真理子は受け持ちのクラスも無く、休みだった。カーテンを開ける。光がワンルームの小奇麗な部屋に射し込んでくる。天気は良さそうだ。いつもならすぐにランニングに出るところだが、今日は行かない。出かけるのだ。

 真理子はまず電車に一時間乗って都心のターミナル駅まで出た。デパートの一階にある化粧品売り場でメイクをしてもらい、いくつか化粧品を買う。肌の手入れをする基礎化粧品を勧められたが、もともと肌は丈夫な方なので、基礎化粧品は買わず、メイクを施すものだけを買った。化粧っ気の無い白い顔に落ち着いたベージュピンクのリップがのり、頬に上気したようなチークがのる。眉は太めだがしっかり描き、目にはくっきりとアイラインを入れ、光沢のあるアイシャドウをのせる。まつげをしっかりと持ち上げたら、今まで見たことのないような洗練された顔ができていた。派手ではないが、きりっとしたモデル上がりのある女優に似た雰囲気の顔になった。

 白のTシャツとデニムでも、メイクがしっかりしているととてもおしゃれに見えた。無造作に下ろしている黒髪すら、色気を帯びてくる。真理子は自分がきちんと、きれいになれたことに満足した。

「この顔なら……行ける」

 真理子はある場所へ行く決意を固めた。デパートを出て、ショーウィンドウにうつる自分を見る。毎日プールに入っているだけあって、すらりとして適度な筋肉のついた身体は真理子の自慢だ。加えてこのメイク。真理子は仕事の顔を完全に忘れて、街の雑踏に踏み出した。


☆☆☆


「キレイだね。写真よりずっといいよ」

 四十台後半に見える営業マン風のおじさんの待つホテルの一室に真理子はいた。

「僕はね、この店に新人が入ると必ず来るんだ。若いね、いくつ?」
「二十四です」
「なんでこの仕事始めようと思ったの? 何かでお金必要になったの?」
「……いえ、お金じゃないです」
「ふうん、ゆっくり聞かせてもらおうかな」

 男は慣れた態度で真理子の後ろに回り、後ろからぎゅっと抱きしめた。小さな胸と薄いからだを確かめると、首筋に鼻をあてて真理子のにおいを確かめる。

「ずいぶん引き締まった身体だね。何かスポーツしてるの?」
「はい。……ジムに通ってます」
「胸、触ってもいいかな?」
「……はい」

 男は真理子のTシャツの下から手を差し込み、ブラジャーの上から胸をなでた。それから腹、腰にもじかに触れて、真理子の身体をすこしずつ男の思い通りに撫で回していった。

「……んっ……ふぅ……」
「真理ちゃん……お客さんがこうして触ってきても、ちゃんと先にシャワーに誘導しないとダメだよ。さあ、僕の服を脱がせてくれないか」
「はい」

 男のワイシャツのボタンを外して脱がせ、しゃがみこんでベルトをカチャカチャと音を立てながら外す。ホックを外してチャックを下ろすと、ボクサーパンツの上からでもはっきりと形がわかるほどに膨張したモノがあった。スラックスを脱がせながら、ひとさし指でつ……とモノの固さを確かめる。固い。この男はわたしとこれからする行為に、こんなに興奮しているのか。 

「真理ちゃん……エッチな子だね。いいよ、思い切りエッチになってごらん」

 静かに低い男の促す声は真理子を安心させた。ホテルの密室で二人きり。デリバリーヘルスというお店を介在した出会いだから、ここでは割り切って女になれる。普段の真面目な自分が押さえつけていた欲望は、真理子の中で巨大な獣へと育ってしまっていた。

 男のボクサーパンツに手をかけて下ろしたら、はじけるようにモノが飛び出してきた。独特のすえたにおいがしたが、真理子は男の股間に顔をうずめた。これからわたしが、射精させるモノ。わたしをもとめてはちきれんばかりになっているモノ。いとしくてたまらなくなり、真理子は男のモノに頬ずりし、唇でなぞり、両手で男の臀部を掴んだ。

「真理ちゃん、本当はシャワーが最初、なんだけど、ごめん、ちょっと我慢できない」

 男は真理子の体を抱き、ベッドへと押し倒した。Tシャツをまくり上げ、デニムのジッパーを下ろし、脱がせた。真理子のきれいな脚があらわになる。所在無さげな真理子の手を男の手でベッドに押さえつけ、真理子の顔を見下ろす。真理子の目は男を求めるように、誘うように爛爛と輝いているのに、その表情は慣れない行為に戸惑っている。男はたまらず、唇を重ねた。真理子は目を閉じたまま、男の唇の感触を味わった。少し固くて、でも薄い感触の男の唇は、ゆっくりと左右に動いていく。ふにっとした唇の感触はくすぐったく、もっとぶちゅっ、て吸い付いてほしい気持ちになった。伏せていた目を上げ、男の目に訴える。もっとして。

 男は真理子が拒絶していないことを確かめた後で、両手で真理子の両耳をふさいだ。触れるだけのキスから、唇どうしを喰むようなキスへ移行し、そのまま真理子の口内へ舌を挿入した。舌は真理子の口の中を犯すように暴れまわる。チュバッ、ジュッ、クチュ……という音が真理子の頭の中に響き渡り、真理子は息ができない苦しさと狂っていきそうな感覚のなか、男の口内で喘いだ。

 長い長い接吻の後、真理子がはあはあと息を荒くしていると、男は真理子の首筋へとむしゃぶりついた。ブラジャーを胸の上にたくし上げる。控えめに現れた白い乳房の先端には、やはり控えめな乳輪と小さな乳首があった。男は両手で乳房を揉みしだきながら、耳、首筋、鎖骨へと舌を這わせていく。乳房の先端はおあずけだ。男は真理子の中に眠る欲望の獣を見抜いていた。この仕事に就いたのは、自分の欲望を飼いならしきれないのだろう。この子はきっとしばらくこの店で働くはずだ。何度でも通ってやろう。だから今日は、僕の満足より、真理ちゃんが満足するまで鳴かせてやろう。

「真理ちゃん、されて嫌なことがあったら言ってね」

 真理子は唇を軽く噛んで、頷いた。


 男は真理子の顔をよく見ながら、乳房の先端を少し弾いた。先端に触れるたび、顔をきゅっとしかめ、唇を噛んでいる。慣れていないのだろう。こういう店で働くなら、ちゃんと鳴けるようにしておかなければいけない。

「真理ちゃん、我慢しないで。声、出していいから」
「……でも……」

 男は左の乳房に顔を埋め、先端をチロチロと舐めた。同時に右の乳房をてのひら全体で包み、時折先端を摘み上げる。

「あッ……いやッ……」

 はあはあと荒い息を吐きながら真理子の声が漏れ始める。男は刺激を与えすぎないように気をつけながら、真理子が徐々に声をあげていくのを確かめていた。先端を口に含んで転がした時、真理子は身をよじり、規則正しく声をあげて、快感に身をまかせはじめていた。


☆つづく☆
 

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