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novelsのブログ

お題にもとづいた短編小説やふと思いついた小説を不定期更新します

【納涼フェスティバル参加作】明日へ続く選択

 

 

 

こんにちは。貫洞です。
【夏休み特別企画】納涼フェスティバルに参加させていただきます。

novelcluster.hatenablog.jp



怖い話、大好きです。

これから書くお話は、単品で読んでいただいてももちろん大丈夫ですが、「第10回短編小説の集い」参加作「ひみつの花園」とリンクしています。

novels.hatenadiary.com

 それでは、今回もどうぞよろしくお願いします。

 


 

明日へ続く選択

 

 そこは「小屋」と呼ばれているが、正確には「屋敷」の広さを持っている。九州の南部、海のきれいな町から車で四十分ほど山へ入っていくと、通常人が立ち入らない不気味な場所へ出る。そこへ行くのはある目的を持った金持ちの男(あるいは女)ばかりだ。

 「花園」という隠語で呼ばれるその場所は、事情があって家へ帰れない年若い女(少女と言ってもいい)や、家庭の貧しさからそこへ売られた美しい女が働いている。働くと言っても、仲居をするのではない。するのは男とベッドの相手だ。

 「花園」へ集まる客は、全国の経営者や裏稼業者、トレーダーや遺産を使いきれない者など、さまざまな人間たちだ。共通しているのは、使い道に困るくらいの金を持っていること。そんなふうになった人間はどこか偏る。やたら人に金を施したくなる者もいれば、目的を見失ったように腑抜けになる者もいる。しかし、貪欲さを失わない者も一定数存在する。彼らは自らの性癖を完璧に満たしてくれる場所を求める。そして世の中とは面白いもので、金の集まる場所にはきちんと「金を使わせる場所」が生まれるのだ。


 「花園」を利用して二年になるエス氏は、自らをアルファベットでSと表現する。彼は若く美しい女の体を欠損させることに興奮する、筋金入りの変態だ。エス氏の本職は医師であり、痛みを伴わせる方法も、伴わせない方法も知っている。どういうやり方で欠損させるかは気分と女の返答次第で決める。

 「花園」に五体満足の若い女が入ったと聞きつけて、エス氏は早々にスケジュールを調整し、花園へと向かった。エス氏はこだわりの外車を運転しながら、どんな女なのか想像をふくらませていた。



「おかえりなさいませ、エス様」

 屈強な体を小さく折りたたんで、折り目正しいスーツ姿の男が出迎える。「花園」の運営は屈強な男が集まって秩序正しく行われている。施設内での女の管理をしっかりしているのもエス氏が「花園」を気に入っている理由のひとつだ。パイプをくゆらせながら、スーツの男からアルバムを受け取る。

「新人の、亜由子でございます」

 写真には、胸までまっすぐに伸びた黒髪、うつろだが整った目鼻立ちの女が写っている。規則正しい労働下におかれていたのであろう細身の体、手で隠している乳房は適度に豊かで、ページをめくるとやはりむっちりと豊かな肉付きのヒップがエス氏の肉欲を駆り立てた。

「せっかくだ、その亜由子と遊んでみる」

 エス氏が答えるとスーツの男は頭を下げた。小さな声で「身体欠損は、どうか1年お遊びの上、気に入られましたらお願いいたします」と伝えた。うん、とエス氏は答え、その日の遊びが始まった。


 広い屋敷の一室で、エス氏と亜由子が引き合わせられた。亜由子は「花園」へ来てまだ一週間だという。ここに慣れる時間を考えると、客を取るようになってまだ二、三日であろう。エス氏がどういう嗜好の持ち主なのかを恐々と探るように三つ指をついて挨拶をした。高級そうな生地でできた花柄の薄手のスリップドレスの中で、細いウエストと豊かなバストのコントラストが美しく透けている。

 エス氏は医者の仕事で身につけたやさしい問診能力で、患者に話しかけるように亜由子へ話しかけた。15分も話すと、亜由子はすぐに本性を表した。自分は助かりたい、両親が心配している、どんなご奉仕でもするから、わたしを助けてほしい、ということを、後ろに流した黒髪を揺らしながら涙を浮かべて訴えてきた。

 過去にエス氏が遊んだ女の中には、助けを請う女が何人もいた。そういう女はえてして客を楽しませるのが下手で辟易していた。少女の頃からここで飼いならされている女の方がずっといい。エス氏は従順に男に従う少女の体を欠損させることは無かった。過去に四肢を欠損させてきたのは往々にして、「わたしは無理やりここに連れて来られた」などと言う生意気な女だった。しかし生意気な女ほど、欠損させた瞬間にショックで自我を失い、ただの生きたダルマになるのだ。うつろな目をして、食事を取ろうとしない。もちろん点滴をして死なぬように生きながらえさせるが、性の奉仕をする気力を失ったダルマはもう要らない。何か楽しい遊びは無いものか。エス氏は考えた。

「亜由子。僕は三人でするのが好きなんだ。ここにエマを呼んでもいいかい?」

 エマとは、幼少の頃からここで働いている従順な少女だ。客の男を全て自分の父か恋人だと勘違いしている生粋の売春婦であり、エス氏はエマのことを特段可愛く思っていた。



 10分ほどで同じ花柄のスリップドレスを着たエマがエス氏の部屋に現れた。亜由子はエマと会ったことはなく、あいさつをしたが、エマは少女特有の人見知りの態度で、エス氏にだけ愛情のまなざしを向けていた。そのまなざしは父に向けるような、恋人に向けるような純粋な愛しさが込められていた。栗色の髪と淡い茶色の目が異人を思わせる少女だった。

 エス氏とエマは、自然に絡み合い、唇と肌を重ね合わせていく。エマは心からうれしそうにエス氏の服を脱がせ、エス氏に少し触れられるだけで女の声で鳴いた。亜由子より十センチは小柄であろうエマの体がエス氏によって跳ねる。取り残された亜由子にエス氏は言った。

「この子より僕を楽しませてくれたら、さっきの願いを叶えてあげよう。さあ、こっちへ来るんだ」

 亜由子は我に返り、エス氏を奪い取るように抱きついた。早く早くと言わんばかりにエス氏を愛撫する。エマは一瞬戸惑ったが、エス氏の空いた左手を自分のちいさな乳房へと導き、エス氏の指が先端に触れるたびに声をあげ、がまんできないとばかりに右手で自分の性器をいじり始めた。

 最初はぎこちなかった三人での性戯も入り乱れて、亜由子とエマは互いの乳房をいじったり、互いを絶頂に導いたりした。エス氏は亜由子が絶頂に達した瞬間を見逃さず、まだ小さく痙攣している亜由子を一気に貫いた。亜由子の全身は女の悦びに満たされそうになったが、目的を見失わないよう、きつく拳をにぎりしめて快楽を体の中のどこかへと押し込んだ。エス氏を楽しませて、ここから出るんだ。

 亜由子はエス氏の体に手足を巻きつけ、強く早く腰を動かした。さあ!  さあ!   と急かすような腰の動きは性戯の愉しみを微塵も感じさせない、いじけた魂の表れだ。なぜ、性戯の愉しみを知ろうともせず、自分の要求を通すことばかり考えるのだ、物事の本質を知らぬこの馬鹿女め。  

 エス氏は亜由子の中には吐精しなかった。下心のある性器はつまらない。絡みつく亜由子を振りほどいて、自身をエマの中に入れなおす。エマの中は適度なぬめりと絞るような粘膜で絡みついてくる。エス氏はすぐにエマをうつぶせにさせ、バックの形になった。後ろからエマを突く。後ろから入れられると苦しいのか、うつ伏せのエマは手で口を押さえ細い声で喘いでいる。エス氏はエマの細い両肘をつかみ、エマの上半身を反らせる。角度が変わって気持ちがいいところに当たるのか、エマは高く大きな声で鳴き始めた。おとなしいエマが必死に首を反らせて喘ぐ姿、エス氏の思う通りの体勢で快感をくれるエマに、エス氏は心から満足して何度か素早く腰を振り、エマの中にたっぷりと吐精した。



「わたしの中にも、出してください……」

 泣きそうな、悔しそうな顔で亜由子がジットリとこちらを見つめてくる。つまらない女だとエス氏は思った。ふと、ある案が頭に浮かぶ。エス氏は最近「リアル脱出ゲーム」という遊びを知った。頭の回転と体力、チームの役割分担などが求められる。少人数になるほどエス氏は強かった。そうだ、亜由子にゲームをさせ、クリアしたらここから出してやることにしたらどうだろうか。 女一人ここから出してやる金額はたかが知れている。それよりこの女が死ぬ気で脱出しようとする姿が見てみたい。

 エス氏はA・B・Cのカードにそれぞれゲームの内容を書いて亜由子の前にカードを伏せた。


A.排便排尿を24時間我慢する(ゲームスタート前に排便排尿可、漏らした分は体内へ戻すこと)
B.毒サソリと毒蜘蛛を放った密室で24時間過ごす
C.青酸カリの入った水とただの水、2つのうち1つを飲み干す(見た目ではわからない)


「簡単なゲームばかりだよ、まずは三枚のカードから一枚引いてごらん」

 エス氏はこれから始まる24時間あるいは一瞬のゲームを想像し、吐精したばかりの自身に再度血液が集まり始めるのを確かに感じていた。 
 


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~完~