novelsのブログ

お題にもとづいた短編小説やふと思いついた小説を不定期更新します

【第25回 短編小説の集い】感想と振り返り



第25回 短編小説の集いに参加させていただきました、かんどーです。

昨年の「納涼フェスティバル」以来の参加です。参加のきっかけをくれた、まさりん様、ありがとうございます。そして、この場所を運営し続けている管理人様に感謝です。書いている時間がとても楽しかったです。


novelcluster.hatenablog.jp



それでは、参加作品への感想を書きます。投稿作品一覧の順で書いていきますね。


135.hateblo.jp

 

とても好きなオチでした! ご自身の振り返りで書かれていましたが、わたしは「右手」がテーマなら、切り落とすオチをまず選んでしまいます。それだけに、この作品のラストがとても素敵で、短いので「このあとは…」と想像させてくれる余韻がありました。

文章ってどうしても「読むのがつらい」ものと「読みやすい」ものに分類されるのですが、こちらはとても「読みやすい」ものでした。なぜだろう考えたのですが、主人公の主観と「水面から出ている二つの膝の山」という描写が脳内再生しやすくて、脳内で「ショートストーリー」仕立てのドラマがすぐに再生されました。この「ショートストーリー」の再生スイッチがすぐに入るかどうかが「読みやすさ」なのかなあと思いました。

タイトルですが、勝手に考えました。「3時間待ちの恋」。安直ですみません。
感想は以上です。




www.logosuemo.com



今回、一番最初に読んだのがこちらです。

読んでまず思ったのが、こちらの小説が、きれいに「お題に呼応している」ということでした。お題を見てまず考えるのが、そのテーマをどの方向に広げるか、です。その点この作品は、まさに「病」がテーマの短編小説でした。

作品の世界は近未来のように感じるのに、実は結構近い未来。そして、難解な用語が並ぶとふつうは読みづらくなるものなのに、身近な病を例に挙げているため、入り込みやすかったです。ラストまで一気にその世界を説明し、身近な感情の部分へと短文で落とし込む勢いがありました。

結末は好みが分かれるかと思います。もっと大げさな結末、世界がひっくり返るような結末を期待してしまいました。(冒頭の勢いを覆すどんでん返し、というのでしょうか。もう一山来るかな、来るかなと待ってしまいました)そう思わされるほど、世界観が色濃く出ている作品でした。

感想は以上です。



noeloop.hatenablog.com

一気に読ませていただきました。朝の教室の中。女の子二人が会話をしている姿が浮かび上がって、その会話を追っていく形式、かわいらしい二人でした。

正直、途中からオチが見えてしまっていたところはありますし、対象となる男子をちらっとでも見たい気持ちがありました。でもそこはあえて書きすぎない方が、想像を搔き立てるのかなと思いました。

シリアスな冒頭の会話から、一気になごんだ雰囲気になるあたり、緩急ついていて面白かったです。「病」というテーマから「恋の病」へと続く作品はほかにもありましたが、この作品はとてもシンプルに、学生時代の甘酸っぱい「恋の病」を描写していて、洗い立ての制服の香りと、ライムのような香りがしてきました。

感想は以上です。



nogreenplace.hateblo.jp

 

一人称で始まっていることに、まず驚きましたが、独白形式の短編小説、非常に面白く最後まで読ませていただきました。小さな世界の中で渦巻く憎悪と復讐がぎゅっと詰まった作品でした。

太った女子中学生が出てきて、そこから場面がパチパチと切り替わってラストの結末へと進んでいく中、どの場面を抽出して小説に抜き出していくのか、過不足ないエピソードの提供という面も興味深く読みました。後に来るラストを導く伏線エピソードを重ねて、いよいよのラストが、とても悲しい結末で、でもこういうことって身近に起きているんだよなあと思いました。ジェンダーの問題、世代間の価値観の相違はおそろしい事件を招くのだと、ちょっとヒュンとなりました。

タイトルから、別のラストを想像していたところへ、考えもしなかったラストが導かれたので、良い意味で裏切られました。

感想は以上です。



diary.sweetberry.jp



呪い、オカルトが大好きなので、何が起こるのかと変な期待をしてしまいました。しかし、人が一番苦しんだり没頭したりするのは、実は「恋」なんですよね…。

優子と、月子に里美。3人の女性が和気あいあいとした雰囲気になるだけで幸せな気持ちになりました。導き出されるのが「恋の病」だとしても、そう気づくまでの苦しさや、ほかの感情であると錯覚する感覚を思い出しました。

一つ、「里美」と「聡史」が頭の中でどちらも「さと」なので少し混乱しました。さっちゃん、さとちゃんと呼び分けているのでリアルなのですが、短編なので全然違う名前のほうがスムーズに読めたかなと思いました。

月子目線になり、優子がとてもきれいになった描写が素敵でした。優子目線から月子目線に変わり、ラストの月子の表情が印象に残りました。

感想は以上です。



syousetu.hatenadiary.com

 

「中学の時のあだ名は黒子、もしくはステルス。」冒頭に飛び出したこの描写がすでに作者の個性をよく出しているなと思いました。テンポよくたたみかける文章。

男の子が自分の殻をやぶるため、お笑いを始めるというのはあり得る話で、リアリティを感じました。漱也の心の中にひそむ闇の部分に、自分で呼びかける描写も面白かったです。短編小説はテンポが大事なんだなと改めて思いました。のぺーっとするよりメリハリつけてちゃきちゃき進んでいくこと。

心の薬を処方されている人はとても多いと思うのですが、人類は長い歴史の中、こんなに心の薬を飲んではいなかったと思います。みんな、薬以外の方法でそれぞれの感情を「おさえる」のではなく「向きあって」きた。そんなことを思いました。

ブログの小野さんとはまた違った感じかなと思いましたが、ある部分で「小野さん」がそこにいたのを発見しました。「ちょいちょいオチをつけないと死ぬ病」なのでしょうか。

感想は以上です。



fnoithunder.hatenablog.com

 

リュウとルナを中心に、異国の雰囲気で始まって、地底の世界へ行く。想像力をフル稼働して読みました。(なぜかわたしの脳内では、ルナの姿は耳がとがっていました…)

全体を通して暗い雰囲気が立ち込めているのですが、その中で二人の思いだけは真実で、ルナは病気なのではなく、もともと地底の人間だった…彼女が地上へ来た目的は一体何だったのでしょうか。スパイ? エピローグでその一部が明らかになりますが、まだ完全にはわかりきれていません。

「ラグランジュ」という言葉の意味を知ることができて、エピローグでかなりすっきりしました。

感想は以上です。



masarin-m.hatenablog.com

 

主人公と小杉さん。いわゆる「おじさん」二人の入院中の一幕という感じですが、「男の子はいつまでたっても男の子」という読後感でした。

二人の病気は、クローン病かな? と想像しながら読みました。もしかしたら架空の病気なのかもしれないけど、何も食べられないことによって性欲が変化するのはとても興味深かったです。ラストに、小説なのにすごいアングルの写真が何枚か、脳内に刻まれるのですが、それも単に「胸」への興味でなく「赤ちゃん」目線なのだと言われて納得しました。

看護士さんたちの態度がとてもリアル! いくつになっても、男の子は看護士さんが大好き、という明るさの中で「病」が人の人生を少し変えるというエピソードもあって面白かったです。

感想は以上です。



author-town.hatenablog.jp

作家のひとって、どこかしら「病的」な部分を持っていると思います。そしてその家族は、そのあおりをダイレクトに食らうでしょう。この作品の中でも、作家の病的さが描き出されていました。作家の息子が作家、というのも面白い。

小説の中にさらに小説があり、じっくり読まないと世界に置いて行かれるので、丁寧に読み進めていきました。「病」がテーマで、描写されているのは「喘息の作家とその息子(やっぱり喘息)」でした。短編小説の集いには、一作くらい「書く人」が主人公の小説があると面白いです。ブログを書く人がブログ論を好むのに近いです。

感想は以上です。


 

 

全作品を読んで思ったこと

 

まず、「病」と聞いて「恋の病」や精神の病を思い浮かべる人が多いのだなと思いました。ただ「恋の病」はネタがかぶってもひとつひとつ違う恋なので、仮に今回のテーマが「恋の病」であったとしても成立しうると思いました。

わたしは理系ではないので、ウイルスの世界を書くことができませんでした。本当は、「病」と聞いて「新種のウイルス」などの話を書きたかったのです。インフルエンザが世界中で猛威を振るって、人は生きている時間の半分くらいインフルエンザにかかっており、仕事のシフトもそれを考慮して組まれている変な世界、とか。(これ書けばよかったな)

小説って、一人一人の個性が色濃くでるのだなあと改めて思いました。

また、初めて参加した1年半前より、ぜんぶの作品を楽しく読めた気がします。きっと、小説が前よりもっと好きになったのだと思います。小説は、その人の生きてきた足跡と、その人の考える世界が何かに投影されて文章化される素敵な世界です。作者の生きざまが現れていても面白いし、ぶっとんだ世界も面白い。

「病」というテーマはとても幅が広く、それぞれの作品世界でみんなが困ったり悩んだり、シリアスな問題に直面しながら、生き生きと動いていました。生き死にを目の前にすると、命が輝きだすというのはよく思います。とても楽しく読ませていただきました。

全体の感想は以上です。



最後に自分の作品を振り返ります。


novels.hatenadiary.com

 

新津きよみさんの小説ばかり読んでいたら、「いやなオチ」を考えることに固執するようになりました。我ながら暗いです。

書き始めた当初は、この半分くらいの長さで、「夢オチ」的にさっと終わらせるつもりでした。しかし、どうしても脳内に浮かんだ世界と、その世界の持つ矛盾を説明したくなり、無駄に長くなりました。結果として、読んでくれた人に考えさせる余白のないものになってしまったことが悔やまれます。

必ず性行為などを入れてしまうことも反省しています。もっと純粋で深い感情が描けるようになりたい。わたしの課題です。次回も参加しようと思います。よろしくお願いします!





以上です。